キャンプ地

ゲームについて好きなように語る場所。ネタバレ配慮なし。

淡色が繋ぐ絆

白田美ツ騎のベストエンドを見終えたのでストーリーの感想。

まだ2√しかクリアしていないけれど、たぶんこの√が一番好きだろうなと思う。

 

クリア直後の感想がこんなにも苦しくて、熱くて、素晴らしい青春群像劇を見せてくれてありがとう、本当にありがとう、という他なかった。

田中右という高すぎる壁に挑むという構図はフミの時と変わらなかったけれど、それに臨む77期生たちの気の持ち様が全く違っていて、これはミツキも属する77期生たちを魅力的に表現する√だったなぁと。

前回よりも恋愛要素は薄かったけれど、それでいい、こんな青春群像劇が見たかった! という充足感がすごい。

個人的に御法川ァ! 菅知ィ! という気持ちでいっぱいなので、次もメイン√にするかロードナイトとオニキスどちらかに関われそうな√をとるかで非常に迷う。

 

白田美ツ騎と立花希佐

フミ√は希佐ちゃんの成長物語だなぁという感想を抱いたが、今回は「希佐ちゃんの抱える偽りへの赦しと77期生の物語」という感じだった。

特に、ミツキの初っ端のイベントが母親との確執を覗かせるものだったので、彼もまたフミ同様に家族との関係に悩む少年の物語なのかなと思っていた。

が、実際は上記の「赦し」が希佐ちゃんとの物語を紡ぐうえでの大事な要素でそこに驚いた。

白田美ツ騎、他者との関わりを避けがちで、歌うことにしか興味が無くて、いざ後輩と関わったら顎で使うような真似をする男なんですよね。

人との関わりを避けるのも、自分は周囲からの感情に感化されやすくそれが煩わしいということを無自覚に感じていて、だから感情のコントロールをするためにそうしていたとか。

だからそんなめんどくさい自分相手に素直に従って明るく接して来る後輩に絆されて、初めて自分から相手のことを知りたいと思って興味を持ち始める。

だけど希佐ちゃんは本当の自分を隠そうと身構えて、その態度を何も話してくれないから理解できなくて、傷ついて、悲しくて、逆に傷つけてしまう。

本当は周りのことが見えていて自分のやるべきことも実力も分かっているけど、行動を起こしても何もできなかった場合のリスクを考えて諦観してしまう、そんな男の上記の行動が、本当に不器用なところが切なくて好きだ…………。

 

私は「希佐ちゃんの偽ることへの苦しみを受け止めてくれる男の√」があるだろうなとは想像していたけれど、それがまさかミツキが担当するとは微塵にも思っていなかった。

だから、希佐ちゃんを赦す男が白田美ツ騎であることに驚いた。

フミが担当しそうだなと思っていたけれどそうではなかったので……。

まあよく考えなくても、冬公演を見ていればたぶんミツキがそれに値するのだろうなとは初見でも想像できたのだろうけれども……。

ミツキが女性よりも女性らしい容姿をしていること、虫が嫌いだったり気候の変化に弱かったり、体力が無かったり小鳥みたいなご飯しか食べなかったりと女性的な要素がつまっていること、それ以外にもたくさんあるけれど、そういった要素を持つ人間だからミツキが「赦し」を担当したのかな。

と思ったが、女性らしさがあるから女性であることや隠す協力をしたり偽りを赦すのではなく、あくまでも自分本位の、希佐ちゃんと仲良くなりたかった、これからもずっと一緒にいたいから赦す、というのが彼の心を希佐ちゃんがどれだけ動かしてしまったのかということが表れていて、なるほどそれじゃあ赦しはミツキが担当するよなぁという納得できる部分があった。

 

白田美ツ騎のことを知った上で観て聴いた「オー・ラマ・ハヴェンナ」と「淡色」

「赦し」とはオー・ラマ・ハヴェンナの主題であるということを念頭に、2周目だからこそわかるチッチとルキオラの関係、白田美ツ騎という人間のことをある程度知った状態、現状の立花希佐と白田美ツ騎の少しだけぎこちない関係性を踏まえて臨んだ2回目の冬公演、本当にやばかった。

推し公演なので贔屓目も入っていますが、本当に、最高傑作だなと。

央國のシシアの役は役者の写し鏡だったが、オー・ラマ・ハヴェンナの役もまた役者の見たくなかったり認めたくない所を映した姿らしい。

友達になりたいからヨモギ売りという事実を偽ったチッチ、友達でいたいから彼女のことを赦したいのに冷静になれず懺悔室に駆け込んでしまうルキオラ。

ユニヴェールに居続けたいのはもちろんだけれどミツキとこのまま先輩後輩でいたいからこそ性別を偽り続けた希佐、友達になりたい頼られたいと思ったからこそ相手のことを知りたいのに傷つけてしまったミツキ。

そんな二人のわだかまりも傷も偽りも全て赦してくれたのがオー・ラマ・ハヴェンナだったんですね。

きっと、冬公演の内容がオー・ラマ・ハヴェンナでなければ二人はすれ違ったままだったと思うと、ネジ先輩には感謝しかない。ありがとう。

初見でも泣けたが2回目は泣けるポイントが少し違っていて、初見はこんな街であっても歪で美しい女の友情という演出にただひたすらに泣かされた。

2回目はミツキが希佐の抱えるものも偽りも全て受け止めて赦しを与えるという、きっと秋公演までの彼なら考えられないような行動を能動的にとったこと、本当に苦しんでいた希佐自身を救ってくれたという事実が、ミツキと希佐の関係性が美しすぎて泣かされてしまった。

 

それから「淡色」のこと。

チッチとルキオラのものとしか思わずに読んで聴いた時と、希佐ちゃんとミツキのことを指していると思って読んで聴いた時では見えるものが違っていて、歌声の優しさに余計に涙腺が刺激された。

他の劇中歌が誰かのことを表していたりするかもしれませんが、「淡色」は本当に希佐ちゃんとミツキのための歌だなぁと思えて仕方がない。

希佐ちゃんへの赦しというテーマや冬公演の演出もあってか、わりとミツキは優遇されている感ありますね。いいぞ。

随所随所で流される「Snow Falls, A Light Far Away」もしんどさにあふれていてすぐに限界化するけれど、何より、冬公演以降にミツキが希佐ちゃんと二人で歌った「淡色」を本当に大切にしていて、時折歌うシーンが挟まれるのが一番しんどくて最高だった。

歌を捨てたくないと決心してから希佐ちゃんと歌いたいと思うのが、同じ系統の「Ms.Robin」でもなく、気分を少しでも明るくするような「オー・ラマ・ハヴェンナ おお、愛するハヴェンナよ」でもなく、央國のシシアの楽曲でもなく、その他の曲でもなく。

ネジ先輩が創ったために偶然ではあるけれど、本当に二人のための曲にしか思えない「淡色」であるというのが本当に興奮したし泣きすぎて吐きそうだった。

2月5日の歌稽古、俺は忘れねぇよ。

「もういいよ泣かないで」から始めるところなんかもう、プレイヤーは逆に泣いた。

白田美ツ騎へ、周囲の感情に感化されやすいというけれど、私は今、君の行動に感情を揺さぶられ過ぎてやばいです。オタクより。

「淡色」がミツキと希佐ちゃんの繋ぐ主軸になるとは、まさか初見では思いもしなかった。

2月5日のあの日のように二人きりで穏やかに「淡色」を歌ったり、舞台の中心に立って二人で歌ったりしていつまでも幸せでいてくれと願う。

 

2周目だからこそ思うこと

まずユニヴェール公演、主役が変わらないのでは? と危惧していたようなことはなくて安堵した。

まさか希佐ちゃんがジャックエースになるとは……という感じでしたが。

初見シシアがアルジャンヌだったのでどう見ても女じゃん! と思っていたので、今回もダブルアルジャンヌ制になりそうだと思っていた。

ただ声の演技はジャックエースもアルジャンヌも大差なかったですね。

ギャラリーのポスターも文字の配置変えただけでおそらく6枚は水増しだろうし、パートナーが射殺される展開も変わり無さそう。

そういうところが少し残念だったなぁと。

流石に全く違う台本を七つ用意するのは無理なので仕方ありませんが。

けれど、この項の冒頭のように主役が変わったことによるユニヴェール公演までの稽古風景やクォーツ以外の対アンバーの動きが全く違ったので、それだけでおつりが出るレベル。

むしろ「淡色」を歌う二人のイベントだけで拝むレベル。

 

あとは秋公演のフミについて。

私は初見の時、フミがメアリー・ジェーンの世界観のように狂っていたっていいと自由に舞台を駆け回るシーンに感じ入るところはほとんどなかったんですよね。

ああ、よかったね、くらいのもので。

ただフミのことをよく知った上で該当シーンを見ると、本当に今この瞬間だけでもフミが縛られず自由に芝居をしていることに何故か泣けてしまった。

追い打ちは海堂とツカサがそんなフミを見てまるであの頃のようだとか、私にとって入学してからずっと学園一位はフミだとか、76期のエースは彼なのだとか賞賛しているシーン。

フミの、アルジャンヌとしてだけでなく芝居をする者としての凄さをよく知った上で見て聞くと、これもまた違うものが見えた。

一度フミを詳しく知ったから秋公演2周目で初めて泣いてしまったように、ミツキのことを知る過程で冬公演を想って限界化してしまうように、きっと、クォーツ生のことを知れば知るほど見たことがあるはずのものがより新鮮に映るシーンがあるのだろう。

2周目が本番のゲームというのは、強くてコンティニューだとか2周目からしか真相が明かされないものを指すと思っていたが、クリアしているフミの既に見たシーンに感じ入るものがあるのだから、ジャックジャンヌもまた2周目が本番のゲーム、と呼ぶにふさわしいのかもしれない。

 

そういえば、ミツキと希佐ちゃんのユニヴェールでの青春はこれからも続いていくのだなと思うと、フミ√とはまた違って喪失感だとか青春歌劇が終わってしまうことへの悲しさは少なかった。

ただ、77期生の来期に懸ける想いを聞いた時に思ったけど、この状態で物語が終わって次年度の物語がないとか生殺しにもほどがある。

 

おわり